猫のはーちゃん
24歳の夏、産まれて初めて猫を飼うことになった。
とある会社の駐車場、段ボール箱に産まれたばかりの仔猫が何匹も居て、母猫は産み落としたきり何処かへ消えてしまったと言う。
ネグレクトか、それとも事故にでもあったのか。
私は一番最初に目が合った、可愛い可愛い200gの男の子を連れて帰ることにした。
お日さまの匂い、あったかいミルクのような匂い、柔らかい、とっても小さな命。
ハニーと名付けた。
初めて家族が出来た気がした。
目も見えない、排泄も自力で出来ない、片手に収まるサイズの赤ちゃん猫は、昼夜問わずミルクを飲んだ。
ちゃんとミルクは作ったし、毎日動物病院にも通った。
野良の仔猫だったから、皮膚にカビが生えていた。
お尻をつつくと、可愛らしいウンチもした。
可愛くて仕方なかった。
毎日定時で帰った。
「はーちゃん」そう呼ぶと口パクで「にゃー」と言って走ってこっちに来る。
眠る時は私の腕枕で寝る。
どんなに暑くても、抱っこが大好きで、膝に乗るのが大好きで、9年間お互い好き勝手言いながら連れ添っている。
はーちゃん。
私の何もかもを知っているから、はーちゃんにだけは嘘はつけない。
隠し事も、出来ない。
大人になったはーちゃんは、相変わらず口パクで「にゃー」と言う。
この先もお互い寄り添って好き勝手行こう、狭い部屋だけど。